君のせい。その後。

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達也くんが、引越しをした。 今はもう、直ぐ近くに彼はいない。いつの間にか、それは当たり前になってしまって…大学三年生の夏がやって来た。 「…迷う。」 菜乃ちゃんと私は、既に短期大学を卒業している。 菜乃ちゃんはMOS検定、ファッション色彩能力検定等、資格を取得したが、卒業後は直ぐに桐山と結婚した。今では専業主婦であり、二人の新居は私の駆け込み寺と化している。 「んー…。やっぱり思い出の夏祭り?」 私はそのまま、幼稚園の先生になった。園は今、夏休みである。とは言え、教員は研修会や運動会の準備の為、出勤する日もあるのが現実だ。 「でも夏祭りだと、まだ心の準備と言うか、切り出すタイミングというか…今から緊張しちゃって、もう何が何やら訳わかんなくて、菜乃ちゃんの落ち着き様を見てるとムカツクのよー!」 「えええぇぇっ!?す、すみません!」 私たちは、高校を卒業した日から変わっていない。親友のままだ。それでも漸く、私は心の整理がついたのだ。菜乃ちゃんに暴言を吐けるまでになった。 なので自分勝手だが、こうなるともう片想い状態である。正直、むずむずしてもどかしくて、心が痒いのだ。 達也くんは、就活はしていない…と、言うと語弊があるが。ヒーローショーのヒーローになるのが夢である彼の場合、就活と言うよりオーディションと言うほうが正しいだろう。 そして明日、彼は地元(ここ)に帰ってくる。私は一歩を踏み出したくて、頭の中の迷路にはまり込んだ。 「んー…。でもたーくんの場合、就活がないんだから、もっと気楽に考えてもいいんじゃない?」 「オーディションに落ち続けたら無職よ?」 「でもまだ、オーディション活動してないし。」 「そうだけど~。」 頭を抱えていると、桐山家のインターフォンが鳴った。 「まだ迷ってるの?」 「さくら~。」 さくらもよく、此処へは遊びに来ているようだ。と、言っても三年生は忙しいので私ほどでは無いのだが。
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