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りんご飴をかじって、花火を眺める。
高校二年生から毎年来るようになったイベント…もう何度目になるのだろうか。何度見ても、その時その時、胸を熱くする何かがそれにはある。理由は毎年、違うけれど。
花火の最中、昨日のように達也くんの手に手の甲をあてると、やはり彼は私の手を握ってくれた。
「………。」
甘えていたいのだ。この優しさに。私の天の邪鬼を許して、曖昧な態度を怒らない彼の器に、私は入り込んでいたいのだ。
けれど、これからもそうしていたいなら、今日は甘えてはいけない。私が、踏み出さなければならないのだ。
ドーンッ!ドーンッ!
「……き。」
「え?」
「好き。」
「えっと、それは…。」
握ってくれた手を、握り返して。花火から目を反らす。
「達也くんが好き。」
二人の視線が重なると、フィナーレの花火が次々と打ち上がり始めて、激しい音が響いた。
そしてその音が止んだ時、周りからは拍手喝采がわき起こり、人は散り散りになっていった。達也くんはと言うと…動かない。
(まさか周りの音で聞こえなかったのかしら。もっとちゃんと、場所を選ぶべきだったかしら。)
内心、冷や冷やする。若しかして…失敗した?と、思った時、
「それは!」
漸く達也くんが口を開いた。
「それは、友達、じゃなくて…愛おしいの『好き』?」
「うん。達也くんが、愛おしいよ。」
腕が伸びてきたのは、あっという間だった。光の速さだった。いつも優しく手を握ってくれる達也くんが、力強く私を抱きしめる。泣いてるのかな?肩が、震えている。
「待っててくれて、有り難う。」
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