君のせい。その後。

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「お待たせしました~。」 カランコロンカランコロン 「菜乃ちゃん、大丈夫?」 「うん、平気。」 「何?姉ちゃんどうしたの?」 「走ったら転んじゃったよ。」 「は!?オイ桐山!何してんだよ!」 「お義兄さんね、奏多くん。」 「は!?」 「桐山先生ー。」 「何?」 今日一番、と言っても過言ではないくらいの笑顔で、その人を見上げる。 「何か奢って。」 「何で?」 「私、貴方の元生徒でライバル。で、貴方の奥さんの親友。その私にお祝いしてください。」 「いい性格してんね、ほんと。」 「有り難う御座います。」 いつの間にか達也くんは泣き止んでいて、守谷姉弟にちゃかされていた。 「朱里。」 すると、トントンとさくらに肩を叩かれて、 「頑張ったね。」 と、耳打ちされ、今度は私の目頭が熱くなった。そして忘れてはいけない… 「朱里ちゃーん!おめでとう!」 ぎゅうううっと、菜乃ちゃんが目一杯の力で抱きしめてくれる。 「有り難う、菜乃ちゃん。」 私が、大好きだった女の子。愛しくて、仕方がなかった女の子。でも私を変えたのは、彼女ではなかった。 「蚊、いるからもう行くよ。」 「姉ちゃん家でパーティーだな。」 「俺の家でもあるんだけど、奏多くん。」 「先生、お世話になります。」 「百井さんに言われると断れないじゃん。」 「桐山!俺、ピザ食いたい!」 「はいはい。おめでと。」 桐山先生が、達也くんの頭をクシャクシャしているのが見える。そして、 「行こう、朱里ちゃん。」 彼女が手を差し伸べる。 「うん。」 「あ!ずるいぞ菜乃!今日から朱里ちゃんは、俺の朱里ちゃんになったんだよ!」 「えー!仲間にいれてよー!」 「お前は既婚者だろ!」 私は立ち上がると二人の間に入り、それぞれの手をとって、ギュッと握った。 「これでいい?」 「うん!」 「今日だけだぞ!」 「ケチんぼ!」 バカになって、苛々して、嬉しくなって、切なくもなって、微笑ましくて、素直になること、たくさんの気持ちを知った。 それは暖かい居場所をくれた…全部、君のせい。 fin
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