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ホールに出ると、厨房の気配で察したのか手空きのホールスタッフもレジの前に集まり知恵を迎えてくれていた。
知恵はそのスタッフ達とも一人一人握手を交わした。
最後に色黒の料理長が「がんばれよ」と笑顔で頭をなでてくれた。
ひとしきり世話になったこの料理長の最後の言葉で、知恵はついに涙を流してしまい頭を深々と下げた。
料理長はレジの上に用意してあった、小さな花束を知恵の前に差し出した。
先日知恵に送られたリトルアーティストが4本束ねてある。
おそらく知恵が置いた飾り棚の花束の中から4本だけ取ったのであろう。
4本は知恵が在籍した年数分で、4年間の思い出を意味するのだろう。
知恵は何度も何度もみんなに向かってお辞儀をした。
背の高いアルバイトの男の子がドアを開けてくれた。
知恵は小さな花束を胸に抱き頭を下げながら表に出た。
最後にみんなに向かって、ガラス越しに大きく手を振ると別れの悲しさを振り切るように知恵は横断歩道を走って渡った。
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