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告白
知恵はすでに立ち上がっていた。
すでに見慣れた壁にところ狭しと並んでいる品をひとつひとつ丁寧に眺めた。
菊池はカウンターの端に立ち、ショッピングをしている客に声を掛けるタイミングを図っている店員のような格好で知恵の後姿を見て微笑んでいる。
天井付近の棚を見上げたまま、知恵の動きが止まった。
「高いところは取ってあげるよ」
菊池は知恵が見上げている視線の先を見ながら、知恵に近づいた。
「どれかな?」
「マスター・・・」
知恵は呟くやくように菊池に呼びかけた。
「ん?」
「モノじゃなくてもいいですか?」
「現金かい?」
とぼけたマスターの冗談にも、笑わずに知恵は首を振った。
その知恵の態度に菊池も「?」となり、いかにも疑問を現すように両手をジーンズのベルトに当てて知恵の真正面に立った。
「わたしを『ぎゅっ』て、して貰えませんか?」
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