昏い部屋

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 電話も何もかもブロック、拒否され、それきり俺は友達と連絡を取る手段を失った。根回しされたらしく、周りに連絡を取りたいと言っても取次いでくれる様子はない。  その状態で半月ばかりが過ぎたある日、友達がいなくなったという話を聞いた。  俺ともめたことは共通の友達全員が知っていたので、心当たりを聞かれたが、すでに話していたあの日の喧嘩くらいしか話すことはない。  何度聞かれても同じことしか返せない。そして友達は消えたまま。その状態に、周りも、俺の言い分が正しいのではと思うようになってくれ、一度あの友達の家を訪ねようということになった。  でも、訪ねた先に部屋はなかった。  マンション自体は存在している。でも、友達が『引っ越した』と教えてくれたその部屋だけが建物に存在してないのだ。  俺以外にも、二、三人部屋を訪ねた奴はいたから、場所を間違えているということはない。なのに一度は訪れた筈の部屋がないのだ。  友達の両親は失踪届を出したようだが、きっともう、あいつが戻ってくることはないだろう。  最後に見た友達の、部屋に引き返す際の、影に飲まれかけたような黒ずんだ顔。それが意識に焼きついて離れない。 昏い部屋…完
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