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「この歳まで生きられた奇跡に感謝している。だからこそ心配なんだ。……俺が死んだあと、奈々美は大丈夫かなって。幼い頃からずっとそばにいたからこそ、心配で仕方ない」
たかちゃんっ……!
目頭が熱くなっていく。
たかちゃんの気持ちが、痛いほど伝わってくるから。
「ごめんな、芽衣子。弱音を吐いちゃって」
「そんなっ……! 全然だよ」
むしろ吐き出して欲しい。
私には聞くことしかできないけど、ずっとひとりで抱え込まないで欲しい。
「芽衣子だからこそ言うけど、ここまで生きられたなら、もうひとつだけしたいことがあったんだ」
「……したいこと?」
思わず聞き返してしまうと、たかちゃんは頷いた。
「あぁ。……できることなら、大学を卒業して就職して。一人前の大人になって奈々美と結婚したかった。……家庭を持って、俺の生きた証を奈々美に残してやりたかった」
切実なたかちゃんの願いに、堪えていた涙が溢れ出す。
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