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唇を噛みしめてしまうと、たかちゃんはもう片方の手でギュッと握ってきた。
「芽衣子、もしかしたら本当にこれが最後になるかもしれないんだ。……俺の身体は、いつ終わりがきてもおかしくないって話しただろ?」
「そうだけどっ……!」
そうだけど、分かっていても聞きたくないよ。
想像なんて出来ない、受け入れることなんて出来ない。
何度聞かされても、たかちゃんがいなくなってしまう未来なんて。
耳を塞ぎたい衝動にかられてしまう。
「俺、門井高史として生まれてこられて、本当によかったと思っている。芽衣子たちと出会えて、心から嬉しく思うよ。……ありがとうな、本当の兄のようにいつも慕ってくれて」
声にならなくて、何度も首を左右に振ってしまった。
するとたかちゃんは、躊躇いがちに私の腕を優しく引き寄せた。
そして背中に回されていく、大きな手。
トンとたかちゃんの胸元に頭を預けると、優しく包み込まれた。
「芽衣子が大好きだよ。……血は繋がっていなくても、芽衣子は俺の妹だ」
たかちゃんっ……!
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