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七月上旬。
気温の高い日が連日続くようになってきた夏本番。
青々しい緑の葉が揺れる放課後の時間、私は心臓が壊れてしまうんじゃないかってほど胸を高鳴らせ、目の前の相手と対峙していた。
下校時刻を過ぎ、部活動に参加する生徒しか残っていない放課後の体育館裏。
体育館の中からは、バスケ部とバレー部の生徒が走る足音や声が聞こえてくる。
さわさわと木々が揺れると、相手のサラサラの髪も綺麗になびく。
そして真っ直ぐ私を捉えると、目を細めて微笑んだ。
「それで話ってなにかな?」
王子様スマイルを初めて真正面で捉え、たじろいてしまう。
なにこれ、やばい。どうしてこの人はこんな無駄にカッコイイのだろうか。
自分から呼び出しておいて、一気に頭の中が真っ白になってしまうほどに。
それでも私は自分を奮い立たせ、目の前の王子様と対峙した。
「あのっ……!」
「ん?」
甘い声に一瞬怯んでしまうも、両手の拳をギュッと握りしめ、顔を見て緊張しないよう瞼を固く閉じて叫ぶように言った。
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