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なぜあの時、茅野の目に恐怖したのか。
傷の醜さに退かれただけならきっと、あそこまで怯えることもなかっただろう。折に触れてあの日の出来事を振り返るたび、そう、晃は思うのだ。
それでも見られたくなかったのは事実で、ただ、ここで言う〝見られたくなかったもの〟とは多分、手術痕などではなかった。その傷が象徴する己の最も醜い側面――誰のものでもいい、健康な心臓が欲しいと病室で願い続けた自分だ。
……結果、茅野の大切な人が命を落とした。
当時の願いと彼女の事故とに直接の因果はない。が、結果として望むものを手に入れた晃は、彼女の死について何も思わないわけにはいかなかった。その念は、大学に入って物事を多角的に捉えることを学んでさらに強くなった気がする。一つの出来事には必ず別の側面があって、良い側面にばかり目を向けていると、必ずその本質を見落としてしまう。晃の今の幸福は、彼女――星野ひかりの死があって成り立つものだということは、もはや否定しがたい事実なのだから。
とはいえ晃に明確な責任や罪はなく。
ただ、誰かの死を希ってしまった過去を、一人密かに悔やんでいるというだけの話ではあるのだけど。それでも――
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