ひとりにしないで

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彼女はサッシガラスを閉めて部屋に入ってきた。 空になった缶をキッチンのゴミ箱に入れた。 テーブルにはすでに下ごしらえが出来ている料理が並んでいる。 量からして二人分はあるだろう。 習慣で二人分の分量が身に染みている。 彼女はテーブルに座り、好きなサラダから食べ始めた。 この後1週間で一番辛い時間が訪れるのを彼女は知っている。 辛い時間を乗り切るための栄養食。 半分も食べないうちに、彼女の瞳からは涙が溢れ出てきた。 彼女はその涙を拭おうともしないでサラダを食べた。 遠くから音楽と、男女の笑い声が響く。 彼女はフォークを急に置くと、電気を消してベッドに飛び込んだ。 ブランケットにくるまって泣いた。 身体を丸くして、声をだして泣き続けた。 「ひとりにしないで」 そう何度も小さく叫びながら、彼女は果てしなく泣き続けた。 おわり
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