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奈緒は神田の後を追うように歩き続けた。
BARグランブルーの店内は、すでに終電で帰る一時の客を越えて落ち着いていた。
カウンターには若いバーテンと入れ替わりに、年配のマスターがいた。
神田と奈緒は先ほどいた同じ場所のカウンターに着いた。
奈緒は訳が分からないという風に神田を見た。
神田は少しおもしろがるようにして奈緒にウィンクをした。
年配のマスターが二人の前にコースターを置いて、目だけでオーダーを聞いてきた。
神田はマスターを見ずに奈緒を見ながら、
「ミルクをロックでふたつ」
と言った。
マスターは聞き間違えたのかという顔をしていたが、神田の表情を見て頷いてからドリンクを作りはじめた。
奈緒はちょっと驚きながら、神田の顔を不思議そうな表情で見た。
しばらくして二人の前に、オールドファッショングラスに丁度ダブルの量に入れられた白色の液体が出てきた。
マスターはこれでいいかという風に神田を見た。
マスターの眼はあきらかに笑っていた。
それに答えて神田も笑顔で返した。
神田はそのグラスを手にして、奈緒を見た。
「ミルクが戻ったところで、さっきまでつかまっていた嫌な客のグチを聞いてくれるか?」
と神田は奈緒に言った。
奈緒は再び泣きそうな表情になりながら、笑って大きく頷いた。そして、
「ありがとう」
と神田に言った。
おわり
このドラマは音声でも聞けます。
http://purekobe.com/drama/milk.mp3
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