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神田はフラつく奈緒を立たせて、コートを着せた。
レジまで奈緒の左腕をしっかり掴んで歩かせチェックを素早く済ませた。
店は地下にあったので、二人は階段を歩いて地上まで出た。
奈緒は一人では歩けないほど酔っていた。
「タクシーに乗せるぞ」
「いや、もう一軒行くの」
「嫌な客の方がよかった」
神田は冗談のつもりで独り言のように言った。
「なにぃ、嫌な客以下で悪かったわねぇ!」
奈緒が神田にからんできた。
神田は奈緒を抱くようにして、北野の街を駅方向へとりあえず歩き出した。
レンガ造りの風見鶏の館が闇の中では、その姿が日中よりも巨大に見える。
その南側には神戸の夜景がある。
しかし深夜ともなってライトの数は若干少なくなっているのかもしれない。
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