偽りのキス

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ここは北野坂の最北にある小さな公園だ。 神田と奈緒は一旦駅の方向に向かったが、奈緒が突然夜景が見たいと言い出してここまで上がってきたのだ。 奈緒は頭一つ高い神田の腕に抱きつくようにして立っている。 二人はこうしていると、人目からは何不自然のない恋人にきっと見えることだろう。 「キスして」 奈緒が俯いたまま、神田に言った。 神田は奈緒の言葉が聞こえたのか聞こえなかったのか分からないが奈緒を見た。 「キスしてよ」 奈緒は今度は顔を上げて、神田に言った。 二人は暫く見詰め合った。 そして奈緒が眼を閉じた。 神田はゆっくりと奈緒の唇に自分の唇を重ね合わせた。 時間にしておよそ10秒のキスだった。
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