偽りのキス

4/5
前へ
/17ページ
次へ
しばらく二人は無言だった。 風が一陣舞った。 その風を待ってたように奈緒が神田に 「二人になれる所に行こうよ」 と言った。 神田は、無言で奈緒を見詰めていた。 無言の二人の尺を埋めるように、奈緒が神田の腕をひっぱった。 神田はゆっくりと首を横に振った。 奈緒は一瞬キョトンとした表情を見せたが、今度は探るように神田の顔を下から眺めた。 神田は再びゆっくりと首を横に振った。 奈緒はその神田の顔を仰ぎ見るようにしばらく見詰めていた。 そしてスローモーションのように奈緒の表情が崩れて泣き顔になった。 目元からは涙が溢れてきた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加