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「青山さんは後でお見えになるんですか?」
若いバーテンは、再びグラスを磨きながら奈緒に尋ねた。
「知らない」
「そうですか」
バーテンはそれ以上のことを奈緒に聞かなかった。
明らかに奈緒の表情からは不機嫌な雰囲気が漂っていたからだ。
若いながらもそのバーテンは心得ている。
「でも誰かと飲みたいわ」
奈緒は、誰に言うでもなくそう言った。
ある程度経験があるマスターなら気の利いたセリフのひとつでも彼女に言ったであろうが、その若いバーテンにはまだそれほどの経験はなかった。
なんとか仕事をするフリをして奈緒のいる場所から少し離れるのが精一杯の気の使いようだった。
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