偽りのキス

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偽りのキス

10時を過ぎた店内は、常連の客で半ば埋まっていた。 奈緒はテキーラを飲んでいた。 開店間もない時間から飲み続けていたので酔いも結構回っていた。 神田は好みのスモークサーモンをつまんでいる。 グラリと奈緒の身体が神田に寄りかかった。 「そろそろ撤退するか」 神田は自分の左肩にある奈緒の頭に向かって言った。 「いや、まだ飲むの」 「やめとけ、そんな飲み方は身体に悪い」 「尚之と同じ口調でそういうのはやめて」 尚之というのは青山の名だった。 「あいつと口調が似ているか?」 「そっくりだわ。あんた達ホモじゃないの」 「とにかく出るぞ」
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