2.希望の(?)依頼

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「こっちは寝不足なんだよ。前の依頼を徹夜で終えたばかりだから、はやく内容を説明してもらいたい。わかっている部分の説明を削るのは、時間の短縮になって効率的だろう」  悪びれもしない昭に、そのとおりですと苦笑しながら玉井は資料を取り出した。 「これを見ていただけますか」  昭が受け取り、ざっと目を通す。その間、東吾はすることがないのでケーキを食べた。ふんわりと広がる生クリームの甘さに、ゆるみかけた頬を引き締めて真面目な顔つきを維持する。 「――なるほどね」  ニヤリとした昭が資料を東吾に渡した。 「秘密裏に、社外に漏れないようにとなると、それなりの金額になりますよ」 「それは、もちろん」 「ダイヴにともなう危険もありますからね。報酬は最後でかまいませんが、調査料とは別に、バックアップの代金は前金でいただきたい」  いつになく乗り気な昭に、資料を読んでいた東吾はほほえんだ。やっと望んでいたダイヴの依頼――しかも大手の会社からの秘密の調査となれば、意欲的になるのも無理はない。 「もちろん。ダイヴがどのくらい危険なものかは知っています。こちらのダイヴァーの深度率は極めて高く、優秀であるとうかがいまして。だからこそ、こちらに依頼をさせていただいたのです」  ピクリと昭が反応し、東吾がそれを言葉にした。 「それは、いったいどこで聞いたんですか?」     
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