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コンロの火を止め、換気扇のスイッチを切り、両手に皿を持った東吾は上機嫌で応接室に移動した。
古びてはいるが掃除の行き届いているそこは、すっきりと片付いていて清潔感がただよっている。
部屋の真ん中にはローテーブルをはさんで、向かい合わせにソファが並んでいた。その奥にパーテーションで区切られている場所があり、東吾はそこに入っていく。
「昭」
声をかけた東吾の目には、パソコンに向かって微動だにしない小柄な青年が映っていた。オレンジがかった金髪に、身幅の薄い体。身長は平均よりやや低いくらいだが、東吾が傍に立つとさらにちいさく見えてしまう。
「おい、昭」
東吾が顔をのぞき込むと、細い眉をしかめた彼から鋭利な視線を向けられた。針先のような鋭い目を見慣れているのか、東吾はヘラリと笑って“あきら”と書いたオム焼うどんを彼に見せた。
「昼飯」
フンッと鼻を鳴らした昭――薄田昭――は、めんどうくさそうに応接室を顎で指した。
「すぐに来いよ。冷めるからな」
わかっていると目顔で答えた昭の、パソコン画面をチラリと見てから東吾は応接室のローテーブルに皿を置き、台所に戻って麦茶とカップをふたつ持ってきた。首をまわしながら、昭がパーテーションの奥から出てくる。
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