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「おう、おつかれ。あんまり根を詰めると、眉間のシワが取れなくなるぞ」
軽口を叩いた東吾に、昭はけわしい顔をした。
「誰かさんが役に立たないから、僕が苦労をしているんだろう」
声質はやわらかいのに、言葉はとげとげしい。
「役に立ってんじゃねぇか」
ちっとも機嫌をそこねずに、東吾は「ほら」と手のひらでローテーブルの上を示した。
「こうやって飯を作っているし、掃除だって俺がやってんだろ? ほっとくと、おまえロクなもん食わねぇし、すぐにゴミまみれにしちまうだろうが」
ほら座れと手振りでうながし、東吾はフォークを手に取って食べはじめた。
「……なんで、ケチャップで名前を書いているのさ」
「わかりやすいだろ?」
「書かなくても、量が違うんだから間違えるわけがないだろう。それに、なんで焼きそばじゃなくて、焼きうどん? だいたい――」
「ぶつぶつ言ってねぇで、さっさと食えよ。冷めちまうし、仕事、まだ終わってねぇんだろ」
ふうっと息を吐いた昭が、ちっともおいしくなさそうに食べはじめる。それを東吾はニコニコとながめた。
「で、どうなんだ。進行具合は」
「あんなもの。僕にかかれば簡単だよ。――まったく。どうしてあれが見つけられないのか、さっぱりわからないな」
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