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「さすが、昭だな。けど、見つけらんなかったから、こっちに仕事の依頼が来たんだろ。だったら、それをよろこびゃいいじゃねぇか」
「それは、そうだけどね」
抑揚のあまりない昭の声だが、東吾は彼がうんざりしているのだとわかった。振り向いて、応接室の奥にあるドアの上部、ガラス部分に書かれている名前を見る。
【カルネ電脳探偵所】
(探偵ってよりは、取りこぼしたプログラムの修正とか、そんな仕事ばっかだもんなぁ)
自分の望んでいた仕事がこないので、昭は不機嫌になっているのだ。そうとわかっていても、どうしようもない。宣伝をしようかと提案すれば、そんな俗っぽいことはしたくないと反対されるし、希望する内容ではなくとも報酬は申し分ない金額を提示されるので、物理的な生活の不満はない。
(中途半端だから、よけいにモヤモヤしてるんだろうな)
さきに食べ終えた東吾は、作業と言わんばかりの態度で黙々と食事をする昭をながめた。窓から差し込む光で、昭の髪があざやかなオレンジに輝いている。さらりとした細い髪と色白の肌。色素の薄い灰色の目と卵型の輪郭は、異国の血を思わせた。
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