1.カルネ電脳探偵所

6/10

150人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
 仮想空間なので、偽名はもちろん、年齢や性別詐称は当たり前。それがウリで「なりたい自分に」なるために、はじめる人はすくなくなかった。実名を推奨しているSNSもあるにはあるが、そこでも偽名が横行している。運営は基本的に「個人同士のトラブルは、個人同士で」と規約に書いているが、それでは済まない事件も散見された。そんな中、警察は電脳空間に特化した仮想研という課を設立して対応に乗り出した。しかしすべての事案を警察が請け負うことはない。そこで電脳関連に特化した興信所が生まれ、電脳探偵という職業が現れた。 (けどまあ、事件はそうそう起こるもんでもねぇし。だいたいは大手に仕事がいっちまうしなぁ)  電脳探偵はたいていがペアで仕事をおこなう。ひとりが電脳空間にダイヴをし、もうひとりがサポートをして事件を解決する。ダイヴは専用の機器を使えば、いちおう誰でも可能だが、対応深度は人それぞれだ。電脳空間へのダイヴは基本、対応深度がいちばん低い数値の人間に合わせて設定されており、それ以上の意識リンクはできないように工夫されている。対応数値の高い人間が戻ってこられなくなるおそれがあるので、一定の深度以上はリンクできない設定でなければならないと法律で規制されていた。  しかしハッカーなどが、その規制を取り払って深くダイヴし、電脳空間を好きに操る事件が起こった。電脳空間では、どんな姿かたちにもなれるし、能力も自由自在だ。規制を打ち破ってしまえば、万能になるなどたやすい。  サイバーテロなどに利用される可能性を危惧した政府は、警察だけでは対応しきれないと考え、ダイヴに適したものを教育、訓練して対策にあたれる人材を確保する制度を作った。専門の講義を受けて国家試験に合格したものは、ダイヴァー免許を受け取れる。     
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加