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せめて家政夫として働かないと、気持ちがおさまらない。昭は自分ひとりで仕事を片づけても、報酬はきちんと等分に東吾に渡す。彼曰く「バディの管理は仕事道具のメンテナンスみたいなものだから。不満がないよう飼ってやらないと、いざというとき役に立たないだろう」だ、そうだ。
どういう理論なのか、東吾はいまいち呑み込めなかったが、昭がそれでいいのならと、ありがたく受け取っている。
(まあ、俺も食ったりなんだり、しなきゃなんねぇしな)
そういうことを言っているのだと把握してから、東吾はせっせと家政夫にいそしんでいた。
立ち上がり、ダイヴ用のカプセルを見下ろす。つるんとしたボディの内側には、寝心地のいいクッションが敷かれていた。カプセルは体格のいい東吾に合わせて、いちばん大きなサイズのものだ。
意識の動きは肉体に影響を与える。そのために、ある程度の動きは可能な広さが必要だった。
カプセルのフタに手を乗せて、表面を撫でる。ピカピカに磨かれた透明のカバー越しにこげ茶色のクッションをながめていると、なんだか眠たくなってきた。東吾はひとつあくびをする。新しい仕事がこなければ、することはない。新しい仕事がきても、ダイヴをしなくていいものならば東吾はヒマなままだ。
(ちっと横になっちまうか)
そう考えて開閉スイッチに指を伸ばした。
「東吾」
ふいに呼ばれてビクリとした東吾は、片頬をひきつらせて振り向いた。昭は画面を見たままで、表情はわからない。
「な、なんだよ」
「メール」
「え」
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