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「入ったから。チェックして」
「お?」
「僕は手が離せない」
「お、おう」
まだバクバクしている心臓を抑えて、東吾は自分のデスクに向かい、メールボックスを開いた。横目で昭を確認してから、新着メールの件名を読む。
(仕事依頼……どこからだ?)
本文を開くと、依頼者名に株式会社クトーユとあった。どこかで聞いたことのある名前だなと思いつつ文面を読み進めた東吾は、聞き覚えがあるはずだと納得する。
いま若者を中心に大人気の、電脳空間【カルパディア】を運営している会社だ。
文面をすべて読み終えた東吾が横を向くと「この仕事、あと一時間ほどで終わるから」と、こちらも見ずに昭が言う。
「わかった」
<一時間半後なら、相談の時間が取れます>
簡潔に返事を送ると、すぐに<二時間後に事務所にうかがいます>との返信があった。詳細を書いていない上に、オンライン対面ではなく、わざわざ事務所での相談を希望しているのだから、重大な依頼のはず。
(俺の活躍できる内容ならいいけどな)
そう思いながら<お待ちしています>と了承を送った東吾は、昭に「二時間後に来るらしいから、なんか茶請けでも買ってくるわ」と、財布を尻ポケットにねじこんで繁華街へ散歩に出かけた。
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