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それどころか大学時の小説に次ぐ出版も叶い、細々ではあるが俺は作家人生を謳歌していた。
むしろ実家のテーラーとの両立に苦しむほどだ。
ない時間をひねり出してできるだけ井上と過ごすようにしているのに放置とは聞き捨てならない。
「なあってば!」
肩の周りに恋人がまとわりついてくる。
「風邪ひくから服着なさい」
「風邪ひきそうだから温めてください」
「今夏だから」
「暑いからパンツ履きたくない」
「空調ついてるだろうが」
振り返りざま井上の唇をかすめ取る。
砂を吐きそうなほど甘々しいやり取りにも慣れてしまった。
それでも満足げに笑う井上の寝癖だらけの顔が可愛くてたまらない。
原稿を保存してPCを閉じる。
「朝飯作るからちゃんと服着て居間にくること」
「えー…」
「母さん今日旅行から帰ってくるから裸で鉢合わせるのはなしですよ」
「じゃあもう一緒に住もっか」
「……え」
驚き振り返ると井上がいたずらっ子のように笑っていた。
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