第1章

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私の家は池袋では結構古い葬儀社をやっております。親父が若い頃に山形から集団就職で東京に出て、昔の事ですから住み込みの丁稚奉公から始めて、独立して今の葬儀社を始めたんです。 その親父も既に他界して私の代になっておりますが、その親父がまだ若い頃に何とも不思議な体験をしたことを父の生前に聞いた事があります。 それは戦争が終わって間もなくの事でした。ある日、番頭をやっていた父が葬儀依頼の電話をとりました。お客様は世田谷の方でした。その依頼が妙なんです。 お客様は初老の御夫婦だったそうです。その御主人様のほうが、 「すまんが、故人の顔を誰にも見せたくない。だから、納棺は私達夫婦にやらせて欲しい」 と言うんです。 そこまでなら、親父もたまにある事ですから驚きません。当時は戦争で顔に傷を負ったなんて話はいくらでもありましたから、ああ、それで顔を見せたくないんだなと親父は思ったそうです。 しかし、もう一つの条件には親父もさすがに異常なものを感じました。その条件と言うのは、
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