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納棺の翌日、親父はお客様御夫妻を乗せ、遺体搬送車で山梨県に向かいました。前の座席に三人がけでしたから狭くて大変だったそうです。なにせ、後部座席は棺桶を乗せておりましたから。
当時は車が今のように多くないですから、渋滞もなく、昼前には山梨県に入りました。甲州街道を行って、大月を越えた辺りで脇道に入りました。位置的には富士山の北側辺りでしょうか。山あいの川に沿って暫く走って行くと、急に御主人が、
「この辺りで運転を交替しましょう」
と言いました。丁度、橋の手前でした。親父はどこに連れて行かれるのか興味があったものですから、自分が今いる場所を覚えておこうとして、橋柱にある橋の名前を見ました。
「目隠橋」
と書いてありました。そこで、親父は目隠しをされて、そこから先は御主人が運転をしました。小一時間も走ったでしょうか?車が停まりました。
そこでやっと親父の目隠しがはずされました。
目の前に見えたのは、何の変哲もない山あいの集落でした。
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