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まるでブラックホールに吸い込まれるように、次々と店外へ追い出される客どもを太郎はただ呆然と見ていた。
「……押したな。」
突然、太郎の背後からの声。
「ひぅっ」
ビクッと身を震わせ言葉にならない悲鳴を上げる太郎。
「て、店長……。」
振り返ると、この店の店長が立ちはだかっていた。
「もう……脅かさないでくださいよ。」
軽いノリで話しかける太郎。
しかし、そこにいつものおちゃらけた店長の姿はなく、その佇まいはまるで数々の死線をくぐり抜けてきた歴戦の勇者だった。
「やはり君は、
私の見込んだとおりだった。
必ずや君が押してくれると。」
状況を全く飲み込めない太郎は首を捻る。
そうこうしているうちに、徐々に甲高くなる排気音。
店内アナウンスはすでに終局を迎えていた。
『10秒前。
5秒前。
3。
2。
1。』
カウントダウンが終わると、
轟音と共に店舗が一際大きく揺れる。
ビシビシと太郎の全身に大きくかかる重力。
「う…そ……」
気が付けば、ガラス張りの店外は、あっという間に星空に変わっていた。
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