0:鏡合わせの狂い咲き

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0:鏡合わせの狂い咲き

万物を溶かしそうな陽光が、ぎらぎらと輝いている。 天頂を過ぎて、なお日は高く、気温は下がる気配がない。雲一つない青空のもとで、学生たちは亡者のように唸り、次の目的地を求めて教室を出る。冷房の効いた教室は、数時間となくサウナに変貌する。 学校側から与えられた昼食及び移動の猶予は、概ね一時間。教室と自分に冷気が残るうちに、部室なり、予備校なり、自宅なりを目指して移動する。三年目の夏ともなれば、慣れ切ったパターン。 俺もまた、昼食を終えて教室を出ようとしたのだが、ちょうど席を立とうとしたところでケータイに着信が入った。 井島先生曰く、大事な用事があるから職員室に来い、と。急いで帰る理由もなければ、教師の呼び出しを無視する意味もない。まだ昼食を食べていた友人たちに断って中座し、こうして職員室を訪れていた。
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