9話 生活

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近くのレストラン。 バカだから、『割り勘ないよね?』って本気で心配した。 一応、1番安いのを注文した。 「今、『モデル』やってるんだね。綺麗になったね」 弘輝さんはあまり変わってない。 「うん。…自活始めたの。…まだ駆け出しだから、家賃とか電熱公費でいっぱいいっぱい。…早く仕事がガンガン来るといいけど、そんな上手くいかないよ。現実は厳しいの」 「独り暮らし始めたの?」 「そう。弘輝さんはまだあのマンションに居るの?」 「……前にさ、俺の兄貴の嫁さんの話したよね?」 「『沙也加』さんだよね。……まだ続いてるんだ?」 「………いや。あの後に、本当に好きだったのは香織ちゃんだったと気づいて、わかんないように引っ越しした……傷つけて、本当にごめん」 「……もう、過去!過去だからいい!」 お人好しは変わってないみたい。なんか笑ってしまった。 「………今は彼氏できたの?」 「彼氏よりお金が欲しい!!…本当に生活かかると恋愛なんか、どうでもいい!」 強がりかな?…でも、本当にそう思いたかった。 「……良かったら、やり直さないか?」 むせた。吹き出しそうになった。 「ゴホッ!ゴホッ!…それは、今更、……嫌」 「ちゃんと責任、今度こそ取らせて欲しい!」 出た。天然責任取り!! 「責任ねえ、じゃあ、食費下さいな」 冗談のつもりだった。 忘れてた。この人、全部本気にする人だって。 「今、10万しかないけど、いい?」 「は?」 本当に財布から10万出して私に渡した。 いや!バカ!本気にするな! 「冗談!!冗談だから、本気にしないでよ!」 「これくらいさせてよ……何もできないまま、責任取れないままだったから……受け取って!」
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