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第1章 ウサギ
階段から人が落ちた。
入学して間もない頃のことだった。
2階から転げ落ちたその人は、痛そうに顔を歪めて倒れている。
周りにいる人はみんなざわざわと話しているだけで駆け寄る人がいなかった。
少し離れた距離から慌ててその人に近寄ると、背の高い男子で、前髪で目が隠れている。
手をすりむけたのか少し血が出ていて、「大丈夫ですか?」と咄嗟に手を伸ばした。
「あ、どうも……」
相当な衝撃だったのか、その人は少しよろよろとしながらも私の手を掴んで立ち上がる。
「よかったら、これ……。使ってください」
ポケットティッシュをその人に渡すと、その人は一礼して受け取ってくれた。
「あ、あの」
「はい。って、あ!! 先生に呼ばれてたんだ! ごめんなさい! そのティッシュあげるから気にしないでください!!」
その人が何か言おうとしたところで、担任の先生に職員室に呼ばれたことを思い出して、慌ててその人を置いて、走って職員室に猛ダッシュした。その後、自分が思いっきり廊下で転んだ。
これは私が高校1年生の春のことだ。少し気が抜けているところがある。
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