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第2章 日課
「また来たんだね」
次の日、いつもの場所に行くと彼はもう来ていた。この彼というのは、ウサギのお面の方の彼である。そして、なんで彼女ではなく彼と断定できるのかというと、声と身長の高さだ。
昨日は動揺しすぎてまったく気付かなかったけど、身長が私よりかなり高い。
平均的な男の子の身長よりも少し高めで、同じ女子じゃありえない。それに普通に聞いたら、声も男の子の声だった。
「そっちこそ、また来たんですね。いったいどこから入ってきてるんですか?」
校門から堂々と入ってきたんだろうか、だとしたらよく先生に何も言われなかったなぁ。
可愛らしいお面を見つめて聞くと「なに言ってるの? ここの制服着てるじゃん」と言われ、見ると……本当だ! 着てた!
「あ、本当だ」
間の抜けた声を出すと、ふふっとお面の向こう側で笑っている声が聞こえる。
私の今の表情もきっとマヌケな顔をしているのかな。私の顔を見て、再度彼は笑った。
「ずっとあの人ばっか見てるからじゃない?」
お面の人はスッとフェンスの向こうにいる人を指さす。
「な、なんで……」
指している方向には、彼がいた。部活仲間とストレッチをしているところだけど、お面の人が明らかに彼を指しているのが分かる。
なんで分かったんだろう。確かにジッと見ていたけど、人が見ていた相手をそう簡単に分かるはずがないよね。
険しい表情でお面の人を見ていると「俺、人の心が読めるんだよね」と返ってきて慌てて視線を逸らして背中を向けた。
私の反応が面白かったのか、くすくすとまた笑う声が聞こえて少しムッとしてしまう。
「嘘だよ。っていうか、目逸らして背中向けても読める人には読めるんじゃない?」
「あ、そっか」
その言葉に素直に反応すると、噴き出す音が聞こえた。
お面の人は肩を震わせて笑っている。
この人はすごく笑い上戸らしい。
「君、面白いね。素直っていうか、なんていうか……。それで、なんで彼を見てたの?」
「え」
「え?」
「あの」
「うん?」
大きな目をしたウサギのお面を何故かつけているその人物は、ジーっと私を見つめている。
その無機質で何も考えていないような大きな目に見られていると、自分の気持ちがすべて読まれているみたいでちょっと怖い。
やっぱり読まれているんじゃないだろうか、と少し身構えてしまう。
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