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……彼と出会ったのは1年生の頃だった。
季節は6月。まだ高校の空気に慣れていなかった私は慣れない委員会を終えて、外で待っているという友達を探し回っていた。野球部のグランドの横を通り、陸上部のグランドを通り、サッカー部の横を通り……。
うろうろと探し回っても見つからない。結局学校の中に入ったんだろうか……と携帯を持ち連絡を取ろうとした。その瞬間だった。
自分の顔の真横を勢いよく何かが通る。左側の髪の毛がその風でぶわっと持ち上がるくらいに素早かった。あまりの一瞬に驚きで息を詰めていると『わりー、それ取って~』と間の抜けた声が聞こえ、振り向くとサッカー部の人たちがいる。
それを見てようやく頭が理解しようと働き出す。
ああ、サッカーボールが私の横を通過したんだ、と。
風が通り過ぎたところを目で追うと、白黒のサッカーボールが転がっている。
『あ、はい』
ハッとして拾おうと近づくと、私が拾う直前で横から手が出てきたのだ。全然気付いてなかったからギョッとしてしまった。
その手はボールをスッと取り、上にあげる。私もボールを追うように視線を上げた。目の前には綺麗なまん丸い二重の瞳が瞬いていて、一瞬で綺麗だと目を奪われた。
その綺麗な瞳の主は深くため息を吐いて、『気を付けてくださいよー!』とボールをサッカー部の人たちに蹴って返す。
遠くから『サンキュー』と聞こえたが、その声に顔を向けている余裕は私にはなかった。
『す、すみません。ありがとうございます』
自分の代わりにボールを取ってくれた相手にお礼を言うと、その言葉に彼は目をぱちぱちと動かした。呆れ気味だった表情を、すぐに崩して少しあどけない笑みを向けられる。
『いいえ~、君も1年生だよね。俺もだよ。つーか、サッカー部の人たちもっと真面目に謝って欲しいよね』
いくら先輩だからって……と、ぶすくれた表情を浮かべる彼に『はい、1年生です』とワンテンポ遅れた返事をする。同い年なんだ……と少し頬が熱くなり、サッカー部の先輩方への怒りなどまったく沸き起こる気分ではない。
『怪我はないみたいだから、良かったけど……って、あ!』
顔を覗き込まれて、大きな声を出されるものだからビクッと肩が跳ねる。
え、なに?
不安に思い、眉を八の字にしていると『ここ赤くなってる』と頬を指さされ、ハッとした。
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