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「あたしね、お客さんノートをつけているのね」
お客さんノート? ゆうちゃんは前触れもなくそんなことを口にしたのだった。
結局あたしは重たい腰をあげ、チャリンコを漕いで、風俗店が軒並み連なる一角の自分の従事する店で待機をしている。
「デスノートなの?」ゆうちゃんはほとんど天然である。
あたしは、目を丸め訊いてみる。フフフ。肩を震わせ笑いながら。
ゆうちゃんの風貌はおかっぱ頭で髪の毛の色は漆黒の黒。
制服のキャミソールの上に羽織っている紺色のガーディガンが何年か前にユニクロで購入をした年季の入った代物だ。毛玉だらけだし、買えばいいのにっていつも思うが真っ向からか言えない。
ゆうちゃんは、首を横に振って、いいえ、と否定をした。
「どんなお客さんが来たかっていうね、ノートなのよ。それも今時ね、紙のノートに書いているのよ」
見せて! きっと見て欲しいのだと思い、あえて見せてと言ってみた。
「えー、どうしょうかなぁー」
間延びの返事をしつつ、ノートを別名、「風俗デスノート」を鞄から取り出した。
「いいわよ。イラストも書いてあるのよ」
屈託なく笑うゆうちゃんの手首にあるためらい傷が痛々しい。
あたしはそこを見ないよう、目を急いで逸らした。
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