フーゾク嬢の独り言

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【○月○日・早番……】  ゆうちゃんが取り出したB5のなんの変哲もない普通のノートにはたくさんのシールとたくさんの落書きがしてあった。 「入店したときから書いているのよ」  フフフ。ゆうちゃんはよく、フフフと上品な笑いをする。がっ、ははは、などという下品な笑いはおつぼね様である、よしみさんだ。 「へー、すごいね。確かゆうちゃんもほとんどあたしと同じ時期に入店しているよね」  よね。最後の語尾を上げる。あたしが先にお店にいたのか、ゆうちゃんが先にいたのか未だに謎である。  お客さんと対面する入り口あたりに、女の子の名前の書いたポケットがありそこに何分で入ったかという紙を入れておく。  なので、その紙を見れば、女の子がどのくらい本数をこなしているのかは一目瞭然なのだ。入店当時、確かゆうちゃんの名前があったような、ないような。  いかんせん、女の子の出入りが容赦なく激しいので、あたしの源氏名の『えりか』は多分3代目えりかぐらいだ。最近入店した「あい」ちゃんは、6代目あいちゃん。オーナーのママさん曰く、  「あいって名前つけるとさ、売れっ子になるんだわ」なんて、誇張さながらの台詞は、思い出す限り、5回は訊いている。 「あいちゃんって名前さ、鬼門じゃね?」  あたしとゆうちゃんはクツクツと笑いながらママさんによく口にする。 「今度は期待の新人よ!だし、若いの?? 肌なんかはちきれそうなのよ」  ママさんは負けじとまくし立てたけれど、実物の何代目か『あい』ちゃんは、確かにはちきれそうな若いだけが取り柄の相撲取りだった。  ノートは小綺麗な丸文字が綺麗に羅列をつくっていた。目で追うように読んでみる。
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