フーゾク嬢の独り言

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 また、谷さん。  常連の牧野さん。すっかりハゲが進行している。後退が著しい。しかたないね。だってオヤジだもん。ゆうちゃん好き、好きっていつもいうけれど、好きってなに?  好きならもっと時間を延ばしてよね。ケーキとか要らないし。絶対にモンブランを買ってくる。けれどあたしはモンブランが嫌い。言ってないけど。  自動的にママさんの胃の中におさまる。    常連の伊藤さん。奥さんが浮気をしているらしい、と眉根をひそめ話し出す。  伊藤さんは話しをかなり盛る癖がある。あたしは適当に相槌を打つ。浮気している証拠があるのかしら?問うてみると、最近下着が派手になったし、化粧をして出かける頻度が高くなったと話す。奥さんが好きなのね。伊藤さんは半泣きで頷いた。  てゆうかさ、伊藤さんも奥さんも60歳過ぎじゃん。  奥さん多分さ、浮気じゃなくて熟女デリヘルで働いているに決まってんじゃんよ!  とは言えない。とにかくたくさんの人を相手に心と身体が疲れた。彼に会いにいき、今日稼いだお金は一瞬で消えた。アホだな。反省。】  たくさん書いてあったが、最初の方だけ読んでみた。わ、なつかしいね、そんなこともあったね。などと言い合うも、ゆうちゃんの最近の日記は淡々と適当に書いてあるぶんだった。 「最近さ、暇でしょ。常連さんもさ、死んだりするしね」 「そうね」    ノートをみると、【オヤジ、デブ、ハゲ、キモい、メガネ】のキーワードの多さにあーあーあ、と納得をした。よく見ているなって。 「風俗業界も高齢化かしらねぇ」  嘆息を洩らす。はぁ、ゆうちゃんも。 「あたしさ、このお客さま日記をね、書籍化したいんだ」  ええ! また突飛なことを。けれど、ボリュームもあり、面白かったのは事実だった。 「でもね、どうやって、書籍にするのかしらね」 「Twitterで拡散してみたらどうかなぁ」  狭い待機室はあたしの汚いアパートと同じくらいの狭さだ。  ゆうちゃんといると心が和むし、風俗で出会った友達なんて表面だけで、中身などないと思っていたのに。偏見ね。
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