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「うるさいな」
しかめ面になった少年がさきほどよりは短く、しかし、はっきりと不快さを表に出して同じ言葉をつぶやく。
「じゃあ……」
少年のつぶやきに答えてそう云うと、少女は噴水に近づき、水に手を触れて弧を描くようにかすかに手を動かした。
噴きでていた水の一部が意思を持つかのように自然の流れに逆らい、外へ外へと伸びていく。
ピシャッ。
うわぁぁぁぁーっ。
水は恋人たちのほうへと向かい、男の目の前で弾けた。情けないほどの叫び声だ。
「な、なんだよ、これは」
彼は頓狂な声を発しながら慌てて周囲を見回すが、すぐ傍には自分たち以外にだれもいない。
女のほうは訳がわからないままも、ここぞとばかりに彼を攻撃する。
「浮気なんかするからヘンな目に遭うんじゃないの!」
びしょ濡れになった彼は、今度は反撃することなくすぐに、
「ごめん」
と素直に謝っている。
よほど驚いたらしい。
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