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「あらら」
それを見ていた少女の声には、妙な落胆の響きがある。
恋人たちはその場を立ち去っていく。
彼のほうは何度も自分たちがいた場所を振り返りながら。
「フフ……キャハハ……おもしろいの。案外、簡単に決着ついたじゃない。ね」
長い髪のせいでよりいっそう華奢(キャシャ)に見える少女、晃実(アキミ)はつかの間の喜劇に笑いを堪えきれない様子だ。
「あんまり無駄遣いするなよ」
さらさらの長めの髪を無造作に手入れした背の高い少年、恭平は半ば笑いながら、晃実をたしなめた。
その目は保護者的な眼差しだ。
「べつに減るものじゃないでしょ」
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