110人が本棚に入れています
本棚に追加
/900ページ
減るものではないのは晃実の力、恭平の力――異能力と呼ばれるものであり、この場所はその練習場になっている。
「けど、遊びに使うものではないよ。少なくとも僕と晃実にとってはね」
恭平の静かに告げるその言葉が、それまでの雰囲気を一掃して張りつめた空気を呼び起こした。
晃実の顔は先刻とは一変して、怒りとも憎悪ともつかない表情に変わる。
「そんなこと充分わかってるよ、わたしだって。忘れたくてもこのわたし自身の心がそれを許さないもの。こんな力、なくしてしまえたらどんなにラクだろうって……」
「そうだな……けど、それだからこそ僕たちは僕たちみたいな人間を故意につくらないために闘わなくちゃならないんだ」
恭平の言葉には強い意志が表れている。
使命だとは思っていない。
ただ、目的が必要だった。
自分たちがここに在る意味を知りたかった。
わたしたちはどこにも属さない、孤独な“生き物”――わたしたちは“民”じゃない。
最初のコメントを投稿しよう!