第2話 奇跡

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「そうだな。人間の欲望は厄介なもんだよ。後先を考えない自己中心的な生き物、つまりは自然の天敵でしかない」 「だから考えてしまう。本当に自然に逆らっていいのか」 「やめる?」 晃実は即答せず、土の下敷きになっているだろう人々に意識を集中させた。 助けて……だれか……。 う……息……息ができない……。 暗い……どいて……わたしの上から……どいて! だれにともなく向けられた苦しみによる心の叫びは、地獄からの声のように聞こえる。 いまからすることは、明らかに自然に、あるいは神という存在があるとするならば、その神に対する冒涜(ボウトク)だ。 畏怖(イフ)の念を抱かずにはいられない。 人の死を尊重するならば、ふたりがその時間を決めるべきものではない。 だからこそ、これまで助けられるのに助けてこなかった。
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