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「それで、あなたはどこまで知ったんですか?」
粋は雄士に向かい、穿鑿した眼差しを向けた。
「およそのことは」
「およそ、ねぇ」
「何が云いたい?」
「覚悟はあるのかと思っただけです」
「……おまえは何を知ってる?」
雄士は目を細め、半ば睨みつけて粋を量るように見やった。
「何も知りませんよ。経緯はわかりませんが……噛み合わせているだけです」
疾しいことはないと主張するかわりに粋は肩をすくめた。
何かわかるかもしれないと、粋の答えに期待していた晃実はがっかりと肩を落とす。
ちょうどそのとき、めったに使うことのない携帯電話が、リビングにある空っぽの書棚のなかでカタカタと音を立てた。
「たぶん、先生」
晃実はつぶやいて書棚のところへ行くと、引き出しのなかから携帯電話を取りだす。
画面を見ると、思ったとおり先生からだ。
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