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「……享くんて?」
『……あら、ごめんなさい。わたしの知り合いで遺伝子関係の仕事についているひとなんだけど……』
急くように唐突に話しだした市絵だったが、雄士に問い返されて自分の失言に気づいた。
「それで?」
雄士はそれがだれなのかを容易に見当をつけたが、素知らぬふりで市絵を促した。
晃実が食器を洗っている傍で粋が電話の様子を見守るなか、雄士の表情は時間がたつにつれ険しくなっていく。
なるほど……そういうことですか。
すかさず盗み聞きをした粋にとって、辻も褄もすべて合致した。
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