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「そんなことはありませんよ。それどころではなかっただけのことでしょう。その件はおれが調べます」
電話を切ると雄士は佇んだまま考えこんだ。
「雄士、どうかした?」
雄士は心配そうに問いかける晃実に顔を向ける。
何かが見えそうだった。
カウンターの向こうで晃実とともに食器を片づけている粋に目を向けると、挑むように見返される。
聞いていたに違いなく、雄士はわずかに顔を歪めた。
「いや――」
――ユ――ウ――――ッ!
雄士が云いかけたのをさえぎるようにその“声”が割りこんだ。
地鳴りのように鈍い音が振動とともに足もとに伝わって、どこまでも揺るがし、空間は淀み、禍々しい空気が瞬時にして広範囲に行き渡っていく。
三人は顔を見合わせた。
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