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第2話 奇跡
二週間後、それは起こった。
ふたりで夕食の準備をするために食器棚からお皿を出していたところ、恭平が突然に切りだした。
「晃実、行くよ」
恭平のかけ声で、ふたりは瞬間転移を開始した。
晃実は恭平を見失わないよう、その気配に集中しながら転移を繰り返していく。
到着したさきに見たものは、無残に土に埋もれ、横たわる電車の姿だった。
昨日までの数日に降り続いた雨で地すべりが発生している。
夏の夕刻はまだ明るい。
異能力を使わなくともはっきりとそれらが見てとれた。
「自然の警告だね」
伐採が進んでいる山の斜面に立って、電車を見下ろしながら晃実はつぶやいた。
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