第3話 それぞれの思惟

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 第3話 それぞれの思惟

なんだ? その眼差しは、少年と呼ぶには抵抗を覚えるほど、十九歳という年齢よりも遥かに大人びている。 神経を研ぎすまし、彼はテレビの臨時ニュースに見入った。 今日もいつもと変わらず大学の講義を受けたあと、父親の会社に顔を出した。 父親の意向で、大学に通う傍ら、補佐として会社の経営に係わっている。 書類を預かって独り住まいのマンションに帰り、習慣的にテレビをつけたとたんのニュースだった。 普段なら聞き流すはずが、直観的に脳が反応した。 リポーターの興奮した意味不明の言葉の羅列。 事故直後の空からの映像とその一時間後の映像。 やらせではないかと思わせる内容だ。 しかし、そう考えるには、どこの局も似たり寄ったりの報道である。
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