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(朝つゆ……か? それにしてはデカいピヨ)
やがてその葉一点に、朝もやがホワホワホワ……と集約していき──。
(……ピョ!?)
薄紅と薄紫の花の間に現れたのは、まだちょっぴり透き通った……小さな娘。
(こ、これは)
葉の上で、生まれたての朝日を頬杖をついてながめている。
ふっくらした頬、ゆるふわの長い髪、雫色のワンピース。その淡い微笑みは、この世の愛を全て束ねたよう。
(……ぴょ)
ワタシのチキンハートがポクンと音を立てた。
お腹をギュルつかせていたミッションがどこかに消え失せる。
それどころか自分が何者であるか、なぜここにいるのかさえも抜け落ちて、己の剥き出しのハートだけがポクポクと主張するではないか。
やがて葉っぱの上の娘は、ワタシのポクポク音が聞こえたかのようにふとこちらに顔を向けた。
「あ、ピヨコさん。おはようございまつゆ」
「ケッコンしてくださいピヨ」
さわ……と、ワタシたちの間に朝もやが漂い通り過ぎてゆく。
「……ケッコンって、なんでつゆ?」
「毎日ワタシと会って、仲良くお話することだピョ」
彼女の乗った朝顔の葉がゆっくりと傾いて……娘がポチョンと地面に降り立った。
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