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「それだけでつゆ?」
「それだけだピョ。だがそのシンプルな事が意外と難しい」
「ピヨコさん、かわいいし。いいでつゆ」
ワタシのプロポーズに、彼女はとっておきの笑顔を添えて実にシンプルにそう答える。
「あたしは朝つゆの精霊、あさつゆ姫でつゆ。だから露の降りる朝にしか会えないけれど、それで良かったら」
「良い」
ワタシの答えも実にシンプルだった。
彼女が精霊であろうと、たとえ会える時間が少なかろうと。この娘と関わっていける鳥生を選ぶことになんら迷いはない。
「あー、でもピヨコさんって大きくなるとニワトリさんになっちゃうんでつよね。そしたらかわいくなくなっちゃうかも?」
「その心配は無用だピヨ。ワタシは一生このままだ」
ワタシはピヨコの姿の方が敵の目を欺けると判断し、かつて進化の途中でBボタンを押していた。
Bボタンとは、組織が開発した進化をストップさせる秘密装置である。
「まあ不思議。そうそうピヨコさん、あなたのお名前はなんでつゆ?」
「……たまぞう」
表向き、ワタシは駅前で弁当店【丸美屋】を営む野里さんちに飼われている。そこの子供たちがワタシに付けた名前が野里 玉造だった。
丸美屋は、のりたまこが美味いと評判の店なのだ。
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