隣の芝生は青く見える

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 受験は見事合格。希望校へ入学できた。実に喜ばしく素晴らしいことだ。それなのに。  私の心は晴れていない。 「お。小野寺たまご」  不意に耳に飛び込んできた懐かしいその呼び名に顔をあげると久遠がベンチに座ったままイナバウアー状態で私に声をかけていた。  私はつかつかと久遠に近づきドスンと隣に座った。 「たまごじゃない。珠子だ」 「懐かしいな。このやり取り。何年ぶり?」 「三年、ぶり」 「だな」  ここで会話は途切れた。当然だ。この三年間、まともに口をきいていないのだから。共通の話題なんてあるわけがない。  それでも私は久遠の隣に座った。飼い主に自分の名前を呼ばれて嬉しそうに全速力で走り寄るワンコさながらに。  心の中だけは。
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