隣の芝生は青く見える

「女子は大変なんだろうな。よくわからんけど」
「男子は大変じゃないの？」
「野郎なんて所詮単純な生き物だから」
「そう。なんか、いいな。単純な生き物」

　地面を見つめる私にまた久遠のフッという笑い声が聞こえてきた。

「ねぇ、さっきからなに？」
「ん？」
「なんか意味深に笑っててさ。キモいよ」
「お前、変わってないなって。さっきたまごって呼んだのにツッコミこなかった。今のお前、余裕無いんだなってわかった。あわよくば俺がたまごって呼んでやったことにこいつは救いすら感じていたかもしれない……、なんてな」

　あわよくば。
　私の知らない間に久遠はそんな言葉をこんなにさらっと会話に入れてくるようになっていた。