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いくら節電のご時世だからって、
こんな時間だっていうのに、
頭上の蛍光灯の灯りだけで仕事しろなんて、ヒドクないですか?
ブラインドの隙間から覗く空は、もう真っ暗だ。
「会社、辞めよっかなぁ…」
ついつい、そんな独り言も言いたくなる。
誰もいなくなったフロアで一人、黙々と残業中の私は、
体力的にも精神的にも、限界に近づいていた。
先週までは、毎日定時で上がる生活が当たり前だったのに、
今週はひたすら残業の毎日。
色々なことが変わり過ぎて、心がついていけないでいた。
そもそもの始まりは、ひと月前、
社内公募の数が足りないからと、ノルマで書いた企画がまさかの採用。
そのせいで、急きょ、企画営業部への異動が決まった。
入社以来、総務一筋できた私にとって、
企画営業部の仕事は、わからないことばかり。
また一から仕事覚えなきゃいけないなんて…。
でも、新人ではないってとこが、また複雑で、
周りに色々聞くのも気が引けて…。
自分で何とかしようとするんだけど、それもなかなかうまくいかない。
そういう葛藤もあって、
ここのところずっと、残業が続いていた。
今日はもう帰ろうかな…。
帰り支度を始めた頃、机の上の携帯電話が短く鳴った。
メールの着信音だ。
送信元は、中学時代の親友の亜佐美。
何だろ?
久しぶりにゴハンのお誘いかな?
『来月、同窓会、やります!』
同窓会!?
『絶対出席してよね!人数少ないと盛り上がらないんだから!』
行かない、とかはナシだよね、やっぱ…。
私が欠席したい理由、亜佐美も知ってるはずなんだけど。
もう10年以上も前の話だし、行くしかない、かぁ…。
葛藤の末、返信メールを送る。
それにしてもタイミング悪いなぁ。
休日出勤はかろうじて免れているけど、夜遅くまでの残業は、もはや日常。
なので、当日休みが取れるかどうかは、正直、あやしくて。
ドタキャンしたら、怒るだろうし。
そう思いながらも、そうなればいいとも思っていた。
杉崎花音、29歳の冬の出来事。
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