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「おぉ、花音!」
尚哉が私を見つけて右手を挙げた。
二人がゆっくりとこちらへ歩いてくる。
相変わらず、二人ともカッコいい。
変わってないな。
ううん、昔よりずっとカッコよくなってる。
もともと身長高かったのに、また伸びてるし、
体格も一回りくらい大きくなった、かな。
「久しぶり」
目の前に立った将生の懐かしい笑顔に、
胸がとくんと音を立てた。
「久しぶりだね」
私もなるべく自然に笑いかけようとするけど。
大丈夫かな?顔、引きつってないかな?
「お前、変わってないなー。チビのままだし」
「言えてる」
二人して、私のことをバカにして笑い合う姿は、中学時代そのまま。
尚哉は口が悪くて、将生は口数が少ない。
お世辞でも、きれいになったとか、言えないの?
朝から頑張ったヘアメイクも、新しく買った洋服も、全部ムダみたいに思えてくる。
「化粧、濃くない?」
「え?」
「ってか、似合ってない」
「はあ?」
いつのまにか目の前にかがんだ将生が、私のほっぺをむにむにと引っ張る。
そういえば、これ、昔もよくやられた!
モチみたいで気持ちいいとか、失礼なこと言われて…。
「あの、…痛いんだけど」
「あー、そこ!さっそく口説いてんじゃねーよ」
尚哉が後ろから将生の肩を組むと、その手は名残惜しそうに離れて行った。
「お前には関係ないだろ」
「いや、あるだろ!」
うわぁ、何だろう、この既視感!
目の前でじゃれてる二人を見ながら、頭の中は中学時代に遡る。
イケメン二人に挟まれて過ごした苦難の日々。
二人の「ファン」を名乗る女子達に、
目障りだとか言われて、散々イジワルされて。
挙句の果てに、
「同情されてるだけなんだから勘違いしないでよ!」とか?
そりゃあ、私は二人みたいに、容姿も勉強も運動も、
ハイスペックじゃないけど、
だからって、同情される覚えもないし。
大きなお世話だっての!
二人は私のこと、いじってからかって、楽しんでるだけなのに。
私はアイツらに振り回されてる被害者なんだってば!
なんで、わかってくれないの?
いつも、心の中でそう思っていたけど、口には出せなかった。
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